令和5年 年末のご挨拶

令和5年12月28日

年末のご挨拶

 2023年の暮れにあたり、ご挨拶申し上げます。本年は、両国関係の「再起動の年」となった2022年に続き、日本・アルジェリア両国の様々な分野での協力が結実する一年となりました。本年の活動について振り返るとともに、来年の展望について、触れたいと思います。

 2022年に実質合意に至った租税条約及び両国合同経済委員会設置協定について、その後の調整を経て、2月に租税条約、7月に合同経済委員会の設立文書への署名が実現しました。日本とアルジェリアの間の法的枠組を律する文書は、これまで2006年発効の「技術協力協定」のみにとどまっていましたが、今回、新たに二つの枠組が加わったことを喜ばしく思います。いずれの文書も、両国間の経済関係の更なる進展・強化を目的とするものであり、今後の二国間経済交流の活発化に資することを期待しています。このうち、租税条約については、12月に無事両国の全ての国内手続を完了し、来年1月20日に発効することとなりました。合同経済委員会設置協定についても、速やかな発効、そして第1回会合の開催に向けて、引き続き取り組んでいきます。

 また、開発協力の分野では、2007年以降16年続いている草の根無償資金協力については、昨年贈与契約に署名されたガルダイア県の知的障がい者支援団体への職業訓練用デーツ加工機材及びティアレット県の孤児支援団体への医療機材について、3月と5月にそれぞれのNGOの本部で引渡し式が行われました。草の根無償資金協力は、文字どおり、草の根レベルで支援を必要とする人々に寄り添って活動するこの国の市民団体の活動を支援するものですが、これらの団体と触れ合うにつれて、アルジェリア社会の持つ助け合いや思いやりの心や、それが支えるコミュニティの強靱性を感じます。本年は、新規案件として11月にウム・エル・ブアギ県NGOへの眼科医療機材の提供の贈与契約が署名されたところであり、来年、引渡し式でこの案件の実施団体の皆さんにお会いできることを楽しみにしています。また、JICAの技術協力事業では、長年にわたってアルジェリアの漁業の発展を支援してきていますが、本年は、「参加型アプローチを通じた零細漁業の共同管理」の枠組みの下で、日本から水産専門家の派遣が決まりました。専門家の方は、2016年にも当国で専門家として活動された経験があることから、非常に歓迎されており、今後の漁業・水産分野での協力に大いに貢献されることが期待されます。

 本年はまた、学術交流で嬉しい新たな展開がありました。筑波大学とアンナバ大学の間で8月に協力協定が締結され、今後、教員や学生相互の交流が活発化していくことが期待されます。アルジェリアの大学の教育・研究水準の高さを背景に、これ以外にも日本の大学とアルジェリアの大学の交流について協議が行われている例もあると承知しており、学術・研究分野での協力の今後の進展が期待されます。

 更に文化交流という観点から、10月に開催された第15回アルジェ国際マンガフェスティバル(FIBDA)に合わせ、「この世界の片隅で」などの作品で世界的に知られる片渕須直監督、また長年にわたりアルジェリアのマンガを研究いただいている青柳悦子筑波大学教授や第一線で活躍される漫画家の方々に当地にお越しいただきました。ワークショップや講演会、アニメーション映画の上映会を通じ、日本の漫画やアニメ文化をより多くの方々に広めることができました。また11月には第5回日本語コンクールを、今回初めて「詩の暗唱」と「スピーチ」の2部門を設けて開催しました。参加者が練習の成果を存分に発揮する姿に魅せられ、また日本語に対する学習意欲とレベルの高さに驚かされました。

 両国の関係に大きく貢献した方々に感謝をお伝えする機会にも恵まれました。アルジェリアにおける空手の普及及び日本・アルジェリア間の友好親善に寄与した日本空手協会アルジェリア支部会長であるムルード・ラトレシュ氏は旭日単光章を、音楽分野における日本・アルジェリア間の学術交流及び相互理解の促進に寄与した国立高等音楽院長であるアブデルカデル・ブアザラ氏は旭日中綬章を受章しました。

 さて、国際情勢に目を向けると、予断を許さない状況が残念ながら継続しています。ロシアによるウクライナ侵略は国際秩序を揺るがし、エネルギーや食糧を始めとする様々な分野に負の影響を与え続けています。また、イスラエル・パレスチナ情勢は深刻化の一途をたどっております。日本は、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の実現に向け、外交努力を粘り強く積極的に続けています。こうした文脈の中で、昨年6月には日・アルジェリア政策協議、12月には治安・テロ対策協議を開催し、両国を取り巻く地域情勢・国際情勢について、更なる協力の深化に向けた意見交換をする機会を設けることができました。

 2024年は、日本とアルジェリアが国連安全保障理事会の非常任理事国の席を共にする年であり、2025年に横浜で予定される第9回アフリカ開発会議(TICAD9)に向けた閣僚会合も開催されます。本年は、両国の関係が、中東・アフリカ、そして国際社会全体にとって一層の重要性を帯びる一年になると考えております。日本とアルジェリアの関係を更に強固なものとし、政治・経済・文化など幅広い分野での協力を深めていくために、大使館一丸となって努力を重ねてまいります。

 2024年が日本とアルジェリアにとって、また皆様にとっても良い年となることを心からお祈り申し上げます。
 
2023年12月28日
駐アルジェリア日本国特命全権大使
河野 章