医療情報
医療概要
1.医療費と医療制度
アルジェリアには日本の健康保険に相当する制度は存在しません。社会保障制度に組み込まれており、アルジェリア人が公的病院を受診する場合は、原則的に医療費は無料です。私立の病院・クリニックを受診する場合は、受信後に現金での支払いが必要となります。いずれにしましても、外国人がよく利用する私立の病院・クリニックの場合は医療費を支払う必要がありますので、契約している保険会社に払い戻しの受け方を確認してください。支払後は領収書を必ず受け取るようにしましょう。
外来受診料は、病院により異なりますが、だいたい800~1,200DA(約1,000円)ほどです。加えて、薬剤費、検査料を1,000DA(約1,000円)程の費用がかかります。入院費は、一般病室(2人部屋が多い)が、およそ1日6,000~9,000DAほどで、特別室等の個室は、1日10,000~20,000DA(約10,000~20,000円)で提供している病院が多いです。支払いは退院時に現金払いとなりますが、入院時にデポジットを要求される場合があります。
2.医療情報一般
アルジェリアの医療水準は、おしなべて低いです。アルジェ市内と地方都市、農村地区とでは、その医療水準は大きく異なります。アルジェ市内には地方と比較すると多数の医療機関があり、医療設備は整っていますが、設備を使いこなせる技術者が不足していることと医療従事者の経験不足のため、その医療水準は決して高いと言うことができません。
また、大学病院を含む公的病院は、常に非常に混雑しており長時間待たされた上、しっかりとした診療、治療を受けることができない事例を経験しています。さらに、ストライキ等で機能していないことも、しばしば見受けられます。そのため、公的病院の利用はあまりお勧めすることができません。
風邪やちょっとした体調不良等の軽微な病気であれば、いくつかの私立病院を受診することができます。しかし、私立病院であっても、最新設備を整えていても、その設備を操作できる技術者がいないため検査ができなかったり、専門医の不足で、限られた症例しか診察することができなかったりすることがしばしば報告されています。そのため、アルジェリアで医療を利用する場合は、プライマリ・ケアのみとして、入院・手術が必要な場合は近隣先進国の病院へ搬送することも念頭に置き、計画を立てられた方が良いでしょう。
また、たとえ医療機関を受診することができたとしても、国内の薬剤流通事情の問題から、処方された薬が薬局で購入できないこともしばしば報告されます。そのため、持病をお持ちの方は、日本の主治医とよく相談の上、緊急時の対応に関してしっかり計画を立ててください。
アルジェリアの医療・保健体制は脆弱で医療技術も総じて低いため、重い持病を抱えた方や高齢者、妊婦、就学期以下の子供を当地で生活させることは、医療面からは、あまり勧めることはできません。また、乳幼児の死亡率や出産による母体死亡率から判断して、アルジェリアでの出産や育児は勧めることはできません。その場合、緊急時の国外移送を常に念頭に置く必要があります。
予防接種
1.必要な予防接種
入国時に義務づけられている予防接種はありません。以下の予防接種を状況によって受けられることをお勧めします。
(成人)
破傷風、A型肝炎、B型肝炎、狂犬病、腸チフス、季節性インフルエンザ
(小児)
上記に加え、日本で実施されている定期の予防接種(ジフテリア、百日咳、ポリオ、麻疹、風疹、結核(BCG))、任意の予防接種(おたふくかぜ、水痘)
ただし、アルジェリアではA型肝炎、風疹、ムンプス、水痘、コレラ、日本脳炎、ダニ脳炎、ロタウイルス、ヒトパピローマウイルス、腸チフスのワクチンは手に入らないため接種できません。その他の予防接種はアルジェリアで受けることができますが、常にワクチンが供給されているわけではなく、ワクチンの在庫が無い場合も多いため、なるべく本邦等、当地に来られる前に受けるようにしてください。
2.現地の小児定期予防接種の一覧
別表をご覧ください。
いずれも、接種時期、回数が日本と異なり、接種計画を立てる際、注意が必要です。しかし今までのところ、アルジェリアの学校に入学する際は予防接種証明を求められたという報告はありません。
病気になった場合(病院の利用・受診の方法)
1.緊急および通常診療時間外
救急車の依頼は市民防衛庁(Protection Civile)に連絡をします。
市民防衛庁(Protection Civile)(24時間対応) フリーダイヤル:14 又は 1021
電話:021 68 61 45 又は 023 56 84 84 又は 023 13 52 51
適切な医療機関に搬送されないといった事例もあるため、受診を希望する病院と事前に連絡を取った上で、利用した方が良いかもしれません。救急で病院に搬送されたとしても、受診までにかなりの時間がかかるという報告も受けていますので、日常から利用する医療機関を決めておくことも頭に入れておいていただければ良いと思われます。
通常診療の時間外受診も、公立病院では予約の必要はなく無料ですが(アルジェリア人の場合)、かなり長時間待たされることを覚悟して下さい。できる限り利用を避けていただく方が無難かもしれません。私立のクリニックでも予約外の診察を受け入れていますが、専門医が居らず適切な処置ができないこともありますので、やはり日常から利用する医療機関を決めて、できれば事業所単位で時間外の対応を含めての診療に関する約束事を医療機関との間で決められてから置かれることをお勧めします。
2.診療時間内一般診療
公立の病院では予約の必要がないことは前述のとおりです。ただし、長時間待たされることも同じです。あまり利用を進めることはできません。私立のクリニックは専門医等の外来日が決められており、原則予約が必要です。予約外の診察や往診に応じるか等は、担当する医師や病院の判断に依りますので、上記にも記載しましたように、できれば事業所毎に当該医療機関と受診時の約束事を決めておかれると良いと思われます。
医療機関
アルジェリアには、邦人医師はもちろん日本語が通じる医師および医療関係者はおりません。英語が通用する医療機関も少なく、フランス語に関しても医師とのコミュニケーションのみ通用する場合が多いようです。下記に外国人が利用したことがある医療機関を示しますが、診療の質を保証するものではなく、受診を推奨するものではないことをご理解ください。また、受診の際は、加入されている医療保険が有効かどうか、あらかじめ保険会社にお問い合わせの上、ご利用ください。
注:当館では、特定の医療機関への紹介は一切行っておりません。下記に掲載されている連絡先に直接お問い合わせください。
医療機関一覧(アルジェ、セティフ、コンスタンティーヌ、アンナバ、オラン、ガルダイア、ジャネット)
アルジェリアで気をつけるべき病気
1.花粉症
アルジェでは、2月から5月にかけての春、もしくは9月から11月にかけての秋に、花粉によるアレルギー性鼻炎・結膜炎の症例が増えてきます。症状に応じて服薬・点鼻薬・点眼薬を使用し、マスクの着用、手洗い・洗顔・洗髪を行ってください。
2.狂犬病
動物(犬、猫、山羊、羊、牛等)と接触する場合、噛まれなくても、唾液より狂犬病ウイルスの感染の危険があります。アルジェでも野良犬の感染例が認められています。噛まれた場合、アルジェのパスツール研究所で狂犬病ワクチンを受ける(暴露後免疫)必要があります。いったん発病すると死亡率100パーセントと言われ、動物との接触が予想される場合は、予め接種(暴露前免疫)をお勧めします。
3.B型肝炎、C型肝炎、エイズ
エイズ発症者、HIV陽性者は年々増加傾向にあります。薬物乱用者も増えていることから、感染者の増加が見込まれています。同じく、B型肝炎、C型肝炎も増加傾向にあります。血液等の体液に、むやみに接触することは避けるようにしましょう。
4.風土病、その他
地方では給水に問題があり、腸チフスや赤痢、A型肝炎が発生することがあります。また、都市部でも食品衛生上の問題から集団食中毒が散見されます。
南部のベシャール県(Béchar)、ビスクラ県(Biskra)、ムシラ県(M'sila)、ナアマ県(Naâma)ではサシチョウバエによる皮膚リーシュマニア症(皮膚発疹)があります。また、同じく南部地域でブルセラ症(発熱、倦怠感)の発生がみられることから、牛などの家畜にむやみに近寄らないこと、または、乳製品はしっかり加熱するか適切な殺菌処理がなされているかを確認してから口に入れるようにしましょう。
丘陵地帯では、サソリ刺傷による死者が毎年発生しております。
また、麻疹などの予防接種対象疾患に関しても流行がみられる地域があるため、本邦で接種が推奨されているワクチンは受けられることをお勧めいたします。
健康上心がけておくくこと
1.日焼け
日差しは年間を通じ強く、帽子、日傘、日焼け止めクリームを使用してください。
2.熱中症
屋外にいると喉の渇きが出る前に汗で水分が失われます。常にミネラルウォーターを携行し、水分補給に努めてください。特に、スポーツ(ゴルフ、テニス等)の時は十分行ってください。頭痛、だるさ、発熱は熱中症の症状で、軽く見ないで病院を受診して点滴を受ける必要があります。
3.食中毒
水道水は地方では不十分な消毒で飲料に適しない場合があります。ミネラルウォーターを飲んでください。生野菜も十分に洗浄していないものは食べないこと。鶏卵も良く火が通ったものを食べてください(半熟不可)。サルモネラ菌で汚染されている場合があります。肉は火が通っていても安心できません。購入した場所での保管状況に問題がある場合があります。信頼の置ける店で購入するか、またはレストランで食べるようにしてください。
4.有害動植物
南部では年間50,000例のサソリ刺傷があり、70名前後の死亡例があります。危険な2種類は、Androctonus australis HectorとButhus occitanus、共に黄色から黄土色のサソリ、暑くなってくると発生し、4月から10月まで、7~8月にピークになり、アルジェリア南部にはどこにでもいます。靴の中・石の下・物陰に隠れているので十分注意してください。治療はアルジェのパスツール研究所で製造されている抗血清(Serum antiscorpionique, IPA)がどんな小さな村(commune)にも配置されていますので、刺されたら直ちに投与を受けてください。 また毒蛇としてはCerastes cerastes (Saharan horned viper)、Vipera lebetinaが挙げられるそうですが、咬傷は少なく、抗血清 (Serum antiviperin, IPA) は村レベルではなく軍隊の駐屯地に保管されているそうです。速やかに静脈注射する必要があります。どちらの抗血清もアルジェのパスツール研究所には常備されています。